アメリカンモダンの象徴、チャールズ・イームズ。ミッドセンチュリーを彩った独創的なデザインの秘密に迫る。

2024.02.08 デザイナーズ家具
アメリカンモダンの象徴、チャールズ・イームズ。ミッドセンチュリーを彩った独創的なデザインの秘密に迫る。
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「イームズ」と言えば、家具が好きな人であれば必ず聞いたことがある名前でしょう。

イームズという名を冠したデザイン家具の多くは、チャールズ・イームズとレイ・イームズの夫婦によって生み出されました。

この記事では、チャールズ・イームズの半生や、イームズ夫妻がデザインを手掛けた世界的名作椅子についてご紹介します。

1972年創業の旭川の家具メーカー「WOW」は、デザイン賞を受賞したデザイナーと共同製作した家具を取り扱っております。そんな作り手であるWOWが、「デザインの歴史」を紐解き、学びながら、「デザインとは何か」「いい家具とは何か」「これからの時代に求められる家具とは何か」を見つめ直すことには、大きな意義があるのではないか。私たちはそう考えています。

チャールズ・イームズの半生

まずは、チャールズ・イームズが世界を代表するデザイナーになる背景を知るため、彼の半生を紐解いていきましょう。

家具デザインを始めるまで

チャールズ・イームズ(Charles Eames 1907-1978)は、アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイスに生まれます。

1924年、ワシントン大学の建築学科に進学するもイームズのデザインに対する考えと大学の方針が合わないことや、建築事務所での仕事とのバランスをうまく作れなかったことが理由で大学を退学処分にされてしまいました。

大学を退学した後は、セントルイスで設計事務所を設立します。1度目は恐慌の影響もあり思うように経営は成り行きませんでしたが、2度目に設立した設計事務所で設計した「聖マリア教会」が雑誌で取り上げられます。これが、当時クランブルック美術アカデミーの学長を勤めていたエリエル・サーリネンの目に留まり、イームズは同校に奨学生として入学し、後にはインダストリアルデザイン学科長に就きます。

妻レイとの出会い

後の妻となるレイ・カイザーとは、このクランブルック美術アカデミーで出会いました。レイはこの学校で抽象絵画を学んでいました。

当時イームズが取り組んでいたオーガニックチェアの製作に、レイがサポートに入ったことがきっかけで交流が始まります。

チャールズはこの時既に結婚していましたが、レイに何通もの手紙を送り情熱的なアプローチをしていたそうです。そしてついにはレイとの結婚のために当時の妻と離婚し、1941年にレイと結婚します。

プライウッド(成型合板)の追求

チャールズはハリウッドの映画会社で美術スタッフとして働きながら、新婚生活を送っていました。そんな中、友人から戦場で負傷兵の足を固定する添え木が使いにくいという相談を受けたことがイームズ夫妻の転機となります。

当時、軍で使用されていた金属製の添え木には振動で傷が悪化する問題がありました。その問題に対して、イームズ夫妻は自転車の車輪の空気入れと加熱コイルを使って、合板を利用した新しい添え木「レッグ・スプリント」を開発しました。

1941年12月、アメリカが第二次世界大戦に本格的に参戦すると、「レッグ・スプリント」は軍から大量に注文され、約15万個以上が生産されました。この成功を受けて、1943年に夫妻は「イームズオフィス」を立ち上げることになったのです。

イームズ夫妻は、レッグ・スプリントで培った成型合板技術を活用して「プライウッド(合板)」の名を冠する、数々の名作椅子を生み出していきます。

プライウッド(成型合板)の追求
レッグ・スプリント 引用元

シェルチェアの誕生

1950年、チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、FRP(繊維強化プラスチック)製の椅子「シェルチェア」を発表しました。これは、当時主流の木製椅子とは対照的な、革新的なデザインと機能性を兼ね備えた椅子でした。

シェルチェアは、1948年にMoMA主催のコンペに出品された金属製モデルをベースに、FRPという新素材を用いて開発されました。FRPは、軽量で耐久性に優れ、複雑な形状にも成形できるという特徴を持っています。

夫妻は、色出しにもこだわり、グレーベージュ、ライトイエローグリーン、エレファントグレーといった絶妙な色合いを実現しました。

量産化されたシェルチェアは、家庭、オフィス、公共施設など、様々な場所で幅広く使用されました。

チャールズ・イームズのデザイン

チャールズ・イームズのデザインは、当時の家具デザイン・家具生産において革命的なものでした。それは、使用する素材や機能面に大きな特徴を持ちます。

新しい素材への挑戦

チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、常に新しい素材や加工技術に注目し、それらをデザインに取り入れることで、家具の可能性を大きく広げました。その代表的な作品が、先ほどもご紹介した「シェルチェア」です。

イームズ夫妻は、ガラス繊維で強化したプラスチックであるFRPの家具への応用に誰よりも早く注目しました。

FRP素材の曲線美を描く座面は、軽量でコストを抑えながら高い耐久性を実現しています。素材の特性を活かした革新的なデザインにより、FRP製の椅子としては初の量産製品となったのです。

イームズシェルチェアは、美しいフォルムと快適な座り心地で、世界中で愛される名作となりました。その誕生は、素材と技術の融合が生み出す、デザインの革新性を象徴する出来事と言えるでしょう。

「使いやすさ」を追求した機能性

最高な品質のものを、より多くの人に使ってもらうことがイームズのポリシーでした。そのため、使い手が便利に使える「機能」としての面も強くデザインに落とし込まれています。

イームズ夫妻は、手頃な価格で使い勝手の良い椅子の大量生産に成功します。これは、当時としては画期的なことであり、多くの人々に家具を身近なものへと変えました。

さらに、脚部の素材や形を豊富に揃え、組み替え可能にするなど、スタッキング機能などの機能性も追加しました。これにより、ユーザーは好みやスタイルに合わせて、多様なアレンジを楽しむことができるようにもなったのです。

使い手が長く使い続けられるような機能性の高さも、イームズ家具の特徴です。シンプルな見た目でありながらも、その使い勝手の良さに驚く人が後を絶ちません。

イームズ夫妻は、デザイン性と機能性を両立した革新的な家具を生み出し、多くの人々の生活を豊かにしたと言えるでしょう。

チャールズ・イームズが家具デザイン業界に与えた影響

ミッドセンチュリーデザインを確立する

20世紀半ばにおいて圧倒的な存在感を放ち、時代のアイコン的存在になりました。

いわゆる「ミッドセンチュリー」と呼ばれる当時の流行的デザインの筆頭とも言えるのがイームズ夫妻だったのです。

イームズ夫妻のデザインは、シンプルで機能的、そして美しいフォルムが特徴です。彼らは、成形合板やワイヤー、FRPなどの新しい素材を積極的に採用し、家具デザインの可能性を大きく広げました。

名作と呼ばれるイームズデザインの家具の数々は、現在でも世界中で愛されています。

後の家具生産の基礎を作る

イームズ夫妻のデザイン理念は、現代の家具デザイナーにも受け継がれています。

彼らの作品は、シンプルで機能的なデザイン、新しい素材や技術の活用、大量生産による低価格化など、現代の家具デザインの基盤となっています。

チャールズ・イームズを代表する椅子

イームズのデザインの中でも名作と謳われる椅子をいくつかご紹介します。

サイドシェルチェア(DSW)

サイドシェルチェア(DSW)
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現代では誰しもが一度目にしたことのある馴染み深いデザインですが、その起源となったのがこのシェルチェアです。「イームズチェア」と呼ばれることも多く、まさしくイームズの代表作とも言える椅子です。

イームズ夫妻はチェアのデザインにおいて、デザインの美しさと同等に快適性や座り心地にも重視しました。シェルの背もたれは柔軟性を持ち、シートポケットは深く、シートの前縁は緩やかに下向きにカーブしています。これにより、長時間でも快適に座り続けることができます。

イームズラウンジチェア&オットマン

イームズラウンジチェア&オットマン
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イームズ夫妻がデザインした「イームズラウンジチェア&オットマン」は、彼らが手掛けた家具の中でも特に高い人気を誇る作品です。19世紀イギリスのクラブチェアを20世紀風に再解釈したデザインと評され、傾斜した座面は脊椎下部の圧力を背もたれに分散し、独特な座り心地を生み出します。そのアイコニックなフォルムは、映画や広告など様々なメディアで活用され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やシカゴ美術館の永久収蔵品にも選ばれています。

オーガニックチェア

オーガニックチェア
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コンパクトで快適な読書用チェアとして開発された「オーガニック チェア」は、1940年にニューヨーク近代美術館(MoMA)が主催した「住宅家具のオーガニックデザイン」コンペにおいて、チャールズ・イームズとエーロ・サーリネンによって発表されました。

彫刻のような有機的なフォルムは時代を先取りしたデザインでしたが、当時の技術では量産することが難しく、長らく試作品のみの存在でした。しかし、1950年代に入り、背もたれと座面が一体成型のシェルを量産できる技術が確立されると、ようやく製品化が実現しました。

現在では、ヴィトラ社によって復刻販売されており、その独特なフォルムと快適な座り心地で、世界中の愛好家から支持されています。

エレファント

エレファント
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1945年、チャールズ&レイ・イームズ夫妻は、プライウッド成型技術を用いて愛らしい象のオブジェ「イームズ エレファント」を開発しました。子どもたちのおもちゃとしてだけでなく、インテリアとしても楽しめる作品です。現在は、多彩なカラーバリエーションを揃えた屋外用プラスチック製も展開されており、幅広い世代に愛されています。

ラシェーズ

ラシェーズ
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チャールズ&レイ・イームズ夫妻によるラウンジチェア「ラ シェーズ」は、1948年のニューヨーク近代美術館のコンペに出品された作品です。ガストン・ラシェーズの彫刻作品「フローティングフィギュア」から着想を得て制作されました。発表以来、デザイン史におけるアイコン的存在として知られています。

プライウッドラウンジチェア

プライウッドラウンジチェア
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イームズ夫妻がデザインした「イームズプライウッドチェア」は、現代家具デザインの基礎とも称される名作です。ベニアシートを緩やかなカーブで成型することで、身体に沿う快適な座り心地を実現しました。緩やかなカーブで輪郭を作ることで、柔らかい印象を与えるのも特徴です。1999年には、タイム誌のミレニアム号で「20世紀最高のデザイン」に選出されています。

まとめ

今回は、家具デザインに革命をもたらしたチャールズ・イームズの半生や、イームズデザインの名作椅子をご紹介しました。

イームズ夫妻が手掛けたデザイン家具の数々は、現代でもハーマンミラー社やヴィトラ社から発売され、根強いファンを多く集めています。

デザイナー家具の歴史を紐解くことで、これからのインテリア選びがもっと楽しみになるかもしれません。

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